令和3年度税制改正により、退職所得課税について、その適正化が行われました。
退職所得は他の所得と分離して課税され、それは下記のように計算されることになっています。
退職所得に係る所得税額=(収入金額―退職所得控除額)×1/2×税率
この式で2分の1をかけてから税率をかけて税額を計算することになっているのは、退職手当等が給与の後払いとしての性格をもち、また一時に支払われ、老後の生活の保障としての性格も有しているからです。
しかしながら、この2分の1をかけて税額を計算する退職所得課税の性質を悪用し、短期間勤務しただけですぐに退職をして、多額の退職金を低い税額負担で受領し、それを繰り返すという事例も見受けられ、これまで役員等については、特定役員退職手当等という制度を作り、2分の1課税をしないという措置をとり、そのような実態に対応してきましたが、それだけでは不十分であるいう声がありました。
そこで令和3年度の税制改正により、退職所得課税の適正化が行われました。すなわち、その年中の退職手当等のうち、退職手当等の支払者のもとでの勤続年数が5年以下である者が、当該退職手当等の支払者から当該勤続年数に対応するものとして支払を受けるものであって、特定役員退職手当等に該当しないものを「短期退職手当等」と定義し、短期退職手当等の「収入金額―退職所得控除額」の額のうち300万円を超える部分の金額については2分の1をかけることなくそのまま税率をかけて税額を計算することになりました。(なお300万円以下の部分の金額については従来通り2分の1をかけてそれに税率をかけることになります。)
この改正により、上記のような実態に相当程度対応できるものと期待されています。
この改正は令和4年分以後の所得税について適用されます。
参考文献
「退職所得の適正化(案)」 (令和3年度税制改正参考資料(財務省))
「令和3年度税制改正の大綱」(令和2年12月21日閣議決定)
取引を正規の簿記の原則に従って記録している者に係る青色申告特別控除額が65万円から55万円に引き下げられることとなりました。
但し、取引を正規の簿記の原則に従って記録している者であって、次のいずれかの要件を満たすものに係る青色申告特別控除額はこれまでどおり、65万円とすることとされました。
(1)その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、法律の規定に則 り電子帳簿として保存していること。
(2)その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表、損益計算書等の提出をその提出期限までにe-TAXを使用して行うこと。
平成32年分の所得税について適用されます。
(参考:税務署『平成30年分 所得税の改正のあらまし』平成30年8月10日記)
所得拡大促進税制の適用要件等が以下のように見直されることとなりました。正式名称は「給与等の引上げ及び設備投資を行った場合の法人税等の特別控除」となりました。(措法42の12の5①)(改正前は「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」)
(1)原則
青色申告書を提出する法人が、平成30年4月1日から平成33年3月31日までに開始する各事業年度において国内雇用者に給与等を支給する場合において次のイからハまでの<要件>を満たすときは、以下の税額控除ができることとなります。
<要件>
イ、雇用者給与等支給額>比較雇用者給与等支給額
ロ、(継続雇用者給与等支給額-継続雇用者等比較給与等支給額)÷継続雇用 者給与等支給額 ≧ 3%
ハ、国内設備投資額 ≧ 当期償却費額 × 90%
<税額控除額>
(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)× 15%
※ただし、調整前法人税額×20%を限度額とします。
上記の「比較」とあるのは、前事業年度を意味しており、大雑把にいうと、前年度より3%以上給与支給額が増えており、上記の設備投資していれば、給与支給額が増加した金額の15%法人税額を安くしてあげましょうというこです。
これには上乗せ措置があり、上乗せ措置の要件と税額控除額は以下の通りです。
<上乗せ要件>
上記イからハの要件に加えて
二、(教育訓練費の額-比較教育訓練費の額)÷比較教育訓練費の額 ≧20%
<上乗せの税額控除額>
(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額) × 20%
※ただし、調整魔法人税額×20%を限度とします。
(2)中小企業者等の特例
中小企業者等が、平成30年4月1日から平成33年3月31日までに開始する各事業年度において国内雇用者に給与等を支給する場合において次のイ及びロの<要件>を満たすときは、以下の税額控除ができることとなります。
<要件>
イ、雇用者給与等支給額 > 比較雇用者給与等支給額
ロ、(継続雇用者給与等支給額-継続雇用者等比較給与等支給額)÷継続雇用 者給与等支給額 ≧ 1.5%
<税額控除額>
(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)× 15%
※ただし、調整前法人税額×20%を限度額とします。
中小企業者等の特例においても上乗せ措置があり、その要件及び税額控除額は以下の通りです。
<上乗せ要件>
上記イ、の要件に加えて
ハ、(継続雇用者給与等支給額-継続雇用者等比較給与等支給額)÷継続雇用 者給与等支給額 ≧ 1.5%
ニ、次のいずれかの要件を満たすこと
①(教育訓練費の額-比較教育訓練費の額)÷比較教育訓練費の額 ≧10%
②その中小企業者等がその事業年度終了の日までに中小企業等経営力強化法のの経営力向上計画の認定を受けたもので、その経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたことにつき一定の証明がされたものであること。
<上乗せの税額控除額>
(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額) × 25%
※ただし、調整魔法人税額×20%を限度とします。
(参考 国税庁「平成30年度法人税関係法令改正の概要」平成30年8月13日記)詳細はこちらをご参照ください。
青色申告書を提出する法人が、以下の要件を満たし、指定期間内に、革新的情報産業活用設備を取得し、又は製作して、これを事業の用に供したときには、供用年度において、その革新的情報産業活用設備の取得価額の30%相当額の特別償却とその取得価額の合計額の5%(3%)相当額の法人税額の特別控除との選択適用ができることとなりました。(措法42の12の6①②)
(1)適用対象法人
青色申告書を提出する法人で生産性向上特別措置法第29条に規定する認定革新的データ産業活用事業者※であるもの。
※一定のサイバーセキュリティ対策が講じられたデータ連携・利活用に必要となるシステムや、センサー・ロボット等の導入などにより短期間で生産性の向上をはかることを目的として策定する「革新的データ産業活用計画」について主務大臣の認定を受ける必要があります。
(2)指定期間
指定期間とは、生産性向上特別措置法の施行の日から平成33年3月31日までの期間をいいます。
(3)適用対象資産
適用対象資産である革新的情報産業活用設備とは、新設または増設に係る
①特定ソフトウエア
並びに
②その特定ソフトウエアとともに取得又は製作する機械及び装置並びに器具及び備品
のうち一定規模のもの※をいいます。
※一定の規模のものとは、一の「革新的データ産業活用計画」に記載された上記の①、②の取得価額の合計額が5,000万円以上のものをいいます。
(4)供用年度
供用年度とは、革新的情報産業活用設備を法人の事業の用に供した日を含む事業年度をいいます。
(5)特別償却限度額
特別償却限度額は次の算式により計算します。
特別償却限度額=革新的情報産業活用設備の取得価額 × 30%
(6)税額控除限度額
税額控除限度額は、次の算式により計算します。
税額控除限度額=革新的情報産業活用設備の取得価額の合計額
×3%又は5%※
※(継続雇用者給与等支給額ー継続雇用者比較給与等支給額)÷継続雇用者比較給与等支給額≧3%の場合です。
(5)特別償却限度額と(6)税額控除限度額は選択適用となります。
参考 国税庁ホームページ 「平成30年度法人税関係法令の改正の概要」
経済産業省ホームページ 「「革新的データ産業活用計画」認定申請のご利用の手引き」 平成30年8月18日記
詳細はこちらをご覧ください。
中小企業者等以外の法人が平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度において次の要件イ及びロのいずれにも該当しない場合には一定の税額控除の規定が適用できないこととなりました。(その事業年度の所得の金額 ≦前事業年度の所得の金額の場合を除きます)(措法42の13⑥)
【要件】
イ、継続雇用者給与等支給額 > 継続雇用者比較給与等支給額
ロ、国内設備投資額 > 当期償却費総額 × 10%
【上記要件のいずれも見なさない場合適用できなくなる税額控除】
イ、試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(研究開発税制)(措法42の4①⑥⑦)
ロ、地域経済牽引事業促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除(地域未来投資促進税制)(措法42の11の2②)
ハ、革新的情報産業活用設備を取得した場合の法人税額の特別控除(措法42の12の6②)
参考 国税庁ホームページ「平成30年度法人税関係法令改正の概要」
詳細はこちらをご参照ください。
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